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乙女の公開交換日記

ノズルとやぎ子(ユニット名:おとめのおもちゃ)のセキララ☆公開交換日記。わくわくの火種を勝手に投げつける。しかと受け止めろ。いや、受け止めなくていい。人生って楽しい!

「花さかセブンティーン」<前編>ノズル

 

 


 

 

朝倉のぞみ。女。1998年7月14日生。17歳。

 

 

 

 

 

朝のホームルームで配布された来月の全国模試の申込用紙。

一番上の行まで記入したところで、思わず溜息を吐く。

 

 

“17歳。”

 

たった今書き終えたばかりのその数字を見つめ、二度目の溜息を吐く。

 

良く「花の17歳」なんて言ったものだが、

言い出した奴はよくもそんな無責任なことを言ったもんだと思う。

17歳が花?じゃあ18歳になった瞬間花は枯れるのか?

20歳なんかもうドライフラワー?飾ったら運気下がるとか言われるやつ?

あーーーもう言い出した奴誰だよ!?ムカつくムカつく!!!

 

チラリと隣の席を見ると、最近クラスの安田くんと付き合いだした佳奈ちゃんが、幸せそうに昨日撮ったプリクラを周囲の友人に配っている。

佳奈ちゃんは同じ17歳だけど、私から見ても「開花なう!」「ディズイズザ、フラワー!」といった感じで、間違いなく17歳を謳歌している。

開花どころかもう満開だわ。満開も満開、これが桜だったらもう絶好のお花見日和って感じ。場所取りに苦労するやつ。

 

 

 

 

・・・一方、私はというと。

 

お花見だったら…もうとっくにシーズン真っ盛りだというのに、まだ咲く気配がない。せっかく花見に来ても、「まだ咲いてなかったねー」って言ってみんなを萎えさせるやつ。

 

 

 

はーーーあ。

3度目にして、最大の溜息を吐く。

 

 

自分が想像していた17歳は。

カッコイイ先輩にキャーキャー言ってみたり、あわよくばそんな先輩とどうにかなっちゃったり、部活動で汗と涙を流したり、オシャレが楽しくて仕方がなくて、好きなお洋服を着るために頑張ったり。

そんなんだったはずなのに。

佳奈ちゃんだけじゃない。周りを見渡すと、みんなみんな花満開に見える。

私だけだ。開花どころか、つぼみすらついていないのは。

 

 

結局、その日は6限目まで全然授業に集中出来ず、とぼとぼと帰路に着く。

いつ買ったのかも覚えてない、古びたケロケロケロッピのキーホルダーのついた鍵で自宅マンションの扉を開けると。

「?」

いつもは扉を開けても真っ暗闇が広がっている玄関が、妙に明るい。訝しげに感じたのも束の間

「のぞ〜〜〜!!!!!おかえりぃ〜〜!!!!」

これが漫画だったら絶対に語尾にハートマークがついているだろう、甘いハイテンション・ビッグボイスで盛大に迎えられる。

 

「お姉ちゃん。帰ってたんだ。」

「そう!家のシャワー壊れちゃってさー。旦那も今日もしかしたら帰れないかもとかいうし、そういえばのぞにも最近会ってないから来ちゃえーって思って!」

相変わらず、語尾にハートマークをつけて話すこの元気な女性は私の姉、南はるか。28歳。

姉は20歳の時に高校生の頃から付き合っていた彼と結婚し、早々に家を出て行った。私が10歳になる頃にはもう家にはいなかったので、姉との思い出はというと、正直言うとこれといってない。一緒に買物に行ったり、ケンカしたり、二人で悪さを企んだり・・・恐らく世間の姉妹が普通にしているようなことを、ひとつとしてやってきた思い出がない。

姉の青春時代に、私は既にいなかったのだ。

 

 

「のぞ、こっち来てこっち来て!」

姉は私の手を引き、ダイニングの方へと連れて行く。

そこに広がる光景に、私は思わず目を疑った。

「いやーあれも食べたいこれも食べたいと思ったら、もう全部用意したらいいじゃん!」って思っちゃって!」

テーブルの上には、お寿司・ピザ・餃子・焼肉・カレー・・・どこかのバイキングかと疑う程、和洋中韓印ジャンル問わず所狭しに料理が広げられていた。

「これ・・・誰が食べるの?」

その時、二人しかいない静かな部屋に突然パーンという衝撃音が響き渡る。

「17歳!誕生日おめでとーう!!!!ごめんね、1日遅れちゃったけど!」

姉はどこから取り出したのか、クラッカーを1人で何本もかき鳴らし、終いには一ハッピーバースデーの歌なんかを歌い出している。(午前れいじを過ぎ〜たら〜♪の方)

 “ついに17歳を迎えてしまった”ことに、こんなに不安や焦燥を抱えている自分の気を微塵も知らず、突然押しかけ勝手に大騒ぎしてお祝いしてくる姉の無神経さに無性に腹が立った。

 

今まで本当にお祝いしてほしい時には、一度も祝ってくれたことなんかなかったくせに。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーその夜、わたしたち姉妹は初めてきょうだいげんかをした。