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乙女の公開交換日記

ノズルとやぎ子(ユニット名:おとめのおもちゃ)のセキララ☆公開交換日記。わくわくの火種を勝手に投げつける。しかと受け止めろ。いや、受け止めなくていい。人生って楽しい!

交換小説(やぎ子)

 えっ、ちょっと待って本当に?
思わず早口でそう言うと、私は目の前の友人をしげしげと眺めた。友人こと、かの子はにやにやと笑ってピースをした。
「かの子一抜け…彼氏ゲット!」
ピース、ピース!と背の低いかの子はぴょんぴょんと跳ね、かの子の制服のスカートで塞がれるように、私の目の前は暗転した。

 恋がしたくないなんて、思ったことがない。これって二重否定、つまり強い肯定になるわけだが、私はいつだって恋がしたかった。
「ねえ、のぞみ、聞いてるー?」
「ああ、うん。えーっと、またお母さんが卵焼き焦がした話でしょ?」
「違うし。しかもまたって言うほど頻度高くないはずだし」
「のぞみぼーっとして!唐揚げ食べちゃうぞ」
ごめん、って言いながら、私は半分の頭で会話を聞いている。例え私がちょっと上の空でも、会話は勝手に進んでくれる。こういう時、何人かの女子で集まると楽だな、と思う。
「それにしても、かの子やりおるよねー」
「ね!うちらの中でかの子が一番だとは思わなかったなあ、って失礼か」
色とりどりのお弁当。卵焼きに、タコさんウィンナー。ほうれん草の胡麻和えに、アスパラベーコン。
みんなのおかずみたいに、私達の会話もカラフルだ。
 みんなの会話は、かの子に恋人ができたのが意外すぎるってことと、どんな恋人なのかってことが中心だった。
 でも私は、全然違うことを考えていた。
 かの子にとっては彼が一番で、彼にとってはかの子が一番なんだ。親じゃない。女友達じゃない。恋人という存在。去年クラスが一緒で仲良くなり、一緒にゲラゲラ笑いながら帰った仲であるかの子が、なんだかすごく遠くに行ってしまったような気がした。
恋って、どんなこと?
それは人を変えてしまう?
「なんかさあ、かの子がちょっと別の人みたいに見えてきちゃったよ。遠いっていうか」
私が思わずそう言うと、みんなはすぐに笑った。
「またのぞみは深いこと言って。のぞみだってすぐ彼氏できちゃうよ」
「そうだよ。2組の剣道部の子かっこいいって言ってたじゃん」
「かの子の彼氏だってどんな人かよく聞いてないしさあ。そういえば2組といえばさ…」
みんなの会話は相変わらず流動的で、私も曖昧に笑ってのり弁を飲み込んだ。
 きっとここにいる誰よりも、私は恋に憧れている。

「ただいま。あれ、」
帰宅し、玄関で靴を脱ごうとして気づいた。揃えられたピンクのヒール。私のでも、母親のでももちろんない。と、いうことは。

「おかえり。随分遅いんだね」